『かもめ食堂』のDVDを観て
『かもめ食堂』のDVDを観た。
こういう映画って永らく観ていなかった。新鮮だなぁ。
推理モノやサスペンスを選り好みしたわけではないけれど、
洋画、邦画、どちらを観るにしても、観ている最中、
無意識にストーリー展開の持って行き方が気になっていた。
でも、この映画は平凡な日々を映像にしただけ。
ヘルシンキで日本人が食堂を営むという設定は平凡ではないけれど、
何かドラマチックな展開があるわけではないし、
登場人物の心理をナレーションで語ったり、
嵐やら時計の音やらに代弁させているといったややこしいこともしていない。
ただただゆったりと過ぎる時間を贅沢に撮っている。
小林聡美さんが生姜焼きかなにかを調理しているとき、
フライパンから煙が立つのだけれど、
その煙が、まるでにおいを観ている人間に届けているようだ。
揚げたトンカツを切るときもサクッサクッという包丁が入る音が、
おいしさを伝えている。
観終わった後に思ったのだけれど、
むやみにことばに頼ったくどい作品や、いたずらに派手な映像を使いまわ作品に
食傷気味だった自分に気づかされた作品だった。