街を歩いて、得てきたもの
「ほぼ日」で、平武朗さんというデザイナーと、糸井氏の対談を見つけた。
平氏は、青山に店を持っていて、デザイナーの仕事をする以前からずっと
いろんな洋服屋や古着屋をくまなく毎日見て回っていたという。
毎日毎日、買う訳でもないのにくたくたになるまで洋服を見ていたので、
店の内情とか洋服の履歴とかが手に取るようにわかるようになっていった。
それを糸井氏が「 本を読むように、街を読んでたわけだ。 」と評した。
糸井 「魅力をつくりだす」という仕事においては、
職人的に磨き上げられる部分って、
あるていど、技術とかノウハウで補えると思うんですね。
でも、これからの時代のつくり手に問われるのは
やっぱり「街を歩いて、得てきたもの」
じゃないかと思うんですよ。
このブランドのTシャツがかっこいいとか、
あの店で見たスカートがかわいかったとか‥‥。
そういうことを考えている時間のほうがぜんぜん長いし、
楽しいでしょう、みんな。
平 でも、ファッションを仕事にしようと決めてから
気がついたことなんですけど 、
ずーっと一日中、お店を回るのって、
夕方ぐらいになると、すごーく疲れるんですよ(笑)。
肉体的な疲れも、もちろんあるんですけど‥‥。
なんかもっと、意識がぼーっとしてくるような(笑)。
糸井 だから、「消費のクリエイティブ」を本気でやろうとしたら、
それだけ、たいへんだってことなんだと思います。
夕方になったら、意識が朦朧としてくるってくらいに。
平 仕事のことをぜんぜん考えなくてよかったら、
もっと楽だったのかも‥‥なんて(笑)。
糸井 でも、それじゃつまらないでしょう。
学校で学べるのは「技術」とか「ノウハウ」だけ。
内面的な情熱とか覚悟は、街に出て、人との交わりから吸収するもの。
どんなモノでもサービスでも、人を魅了するのは内面的な情熱とか心遣い。
「技術」とか「ノウハウ」は、それらの補助的な道具に過ぎない。
でも、街を歩くってくたくたになる。それに耐えられるか?