引き出しのなかのものの整理

スーパーマリオを作った宮本茂氏と糸井重里氏との対談から。
                      
  宮本 歳をとって、出口に行くときの責任が重くなればなるほど、
      出るって決めたときには、自分に見えてる「ダメな理由」が
      致命的なのか、そこそこのリスクなのかを、
      細かく判断できるようになってきていて。
  糸井 ネガティブなことの大きさと影響に、順位がつけられるようになるんだね。
      それは、大事なことでしょう?
  宮本 大事ですね。
      それができると、ぶれない判断ができるようになる。
      で、そうすると、やっぱりね、
      「自分のアイデアはなんでダメなんですか?」
      って若い人に言われたときに、
      「それは自分で考えんと、ほんとはあかんやろ」と思うんですね。
  糸井 うーん、なるほど。
  宮本 自分のアイデアがなぜダメなのか、自分で考えて、
      自分でダメな理由が整理できて、きちんと把握できると、
     それはいつか必ず使えるっていう。
  糸井 そうですね。
      だから、「あー、ダメだった」で終わってると、もったいない。
  宮本 つぎにつながらないんですよ。
      だから、昔は「引き出しにアイデアを貯めなさい」って
      よく言ったけど、最近は、「引き出しに、ダメだったアイデアを、
      『なぜダメだったか』という理由をつけてしまったらいいのちゃうか」と。
      こう、ラベルにダメな理由を書いてね。
  宮本 そういうものをいっぱい持っておくと、
      いつか、どこかの局面でラベルが剥がせるときがくるんですよ。
      「あ、いまはルールが違うから大丈夫」とかね、
      「昼間はダメだったけど夜ならこれでいける」とか。
  糸井 いままで話してきたことって、ぜんぶつながってますね。
      アイデアとは複数の問題を解決すること、っていうことから
      問題意識、出口に向かう姿勢、ダメな理由を把握すること。
  宮本 そうですね。
      だから、「アイデアはどうやって思いつきますか?」っていう
      うまく答えられない質問に戻っていうと、
      引き出しのなかのものの整理がきちんとできてることと、
      出口を見つけようっていう目的意識の両方がないと、
      アイデアなんて出ないんですね。
  糸井 違いますよね。
      タイミングが違ったら、ぜんぜん違う。
  宮本 もう、ぜんぜん違うんですよ。
      たとえば、プロジェクトが迷走してるときに、
      50パーセントよくて、50パーセントダメな
      半分半分のアイデアが出ても、ぜんぜんダメなんですけど、
      企画が順調に進んでるときは、60パーセントぐらいがダメでも、
      いいところがあるなら使えるっていうふうになりますよね
                    
試験でもスポーツでも、
不合格だったとき、失敗したときこそ、
なぜダメだったかを徹底的に原因究明しないと次への発展はない、
って自己啓発本などでは言っている。
                
ゲームクリエータのような、組織というチームワークで
作品を生み出す仕事をしている人も、同様なんだ。
                            
うまく行ったときよりも、うまく行かなかったときの調査、分析。
                  
人間、いつまでも順調に成功街道を突き進める訳ではない。
それまでOKだったものが、いきなりNGになることだってある。
                               
そのとき、引き出しに何も無いと、
過去の成功体験から導かれるものしか出せなくなる。
それは、今までと何の変わり映えもない作品。
巻き返しできるはずがない。
                             
でも脳の引き出しって、どうやって整理すればいいんだ?