「キャラクター優先」か「ストーリー優先」か

『落語の聴き方楽しみ方』(松本尚久)で、
落語の滑稽ばなしには、「八五郎」や「与太郎」など、
類型的キャラクターが出てくる、
人情ばなしには、特にそのような類型的キャラクターはいない、
という箇所を読んで、NHKの『トップランナー』に
今敏氏が主演したときのことを思い出した。


今敏氏は、昨年8月に亡くなったアニメ映画監督だ。

今氏が映画を制作するときは、ストーリーから考えると言う。
監督によっては、キャラクターを先に決めてから
ストーリーを展開していくという人もいる。


映画監督ではないが、漫画家の高橋留美子氏は、以前
「漫画はキャラクターが命」というようなことを、
漫画家を目指す読者に向けて言っていたから、
高橋氏はキャラクターを先に決めるタイプなのだろう。


高橋氏のコメントは、何年も前に読んでいて、
ベストセラー漫画家である高橋氏のことばを絶対視してきた自分としては、
今氏の「ストーリーに最初に決める」ということばを聞いたとき、
今氏は、キャラクターも決めない段階で、
どうやってストーリーを構築するのだろう、と不思議だった。


でも、落語の滑稽ばなしと人情ばなしの対比を読んで、納得できた。
乱暴な分け方だが、
 滑稽ばなし:キャラクター優先
 人情ばなし:ストーリー優先
と言えるのではないか。

キャラクター優先とは、キャラクターが先に決まっていて、
そこで繰り広げられるおかしなはなしがたくさん積み上げられていく。
それに対して、ストーリー優先とは、ストーリーが最初に考え出されて、
それに適したキャラクターが場面場面で配置されていく。


きれいサッパリと分かれるモノでもないのだろうが、
物語構築の手順がちがう。
手持ちの材料を見定めて、そこから何が提供できるかを考えるのか、
完成形を見据えて、そのために必要な材料探しをするのか、
取り組み方は、いろいろある。