ビジネスにおける「クリエイティブ」

『インターネット的』(糸井重里)より、

  人と人とは、そんなに簡単にわかりあえるものではない、
  ということは、コミュニケーションを考えるうえで、
  とても大事なことです。
  なのに、簡単にわかったつもりでまとめないと
  前に進めないからという理由で、
  人間をまとめてしまう場面があります。
  どういう商品をどういう人に買ってもらいたいかという、
  いわゆるマーケティングという手法です。
  全面的に否定するつもりはないのですが、
  マーケティングがまるで、「物質には引力がある」
  というのと同じような「科学」として語られているのを見ると、
  ちょっとそれはちがうんじゃないのと思います。


ほぼ日刊糸井イトイ新聞での、糸井重里氏と田坂広志氏との対談において

  田坂 私が今、心配しているのは、
     マーケッターが100人いると、
     99人くらいが、操作主義に陥る点です。
  
     操作主義のひとは
     「消費者がこう考えて欲しい」と思うのです。
     もう一歩進めて言うと、
     「こう考えさせてやろう」
     と言う風に、走ってしまうんです。

  糸井 クリエイティブがなにもないところで、
     何に飢えているかわからないひとたちに、
     めちゃくちゃに安いものが、
     へとへとになりながら売られてゆく。
     消費者は、めちゃくちゃに安いものを
     へとへとに売られていても要らないから、
     もっとそっぽを向いてしまう。
     そうなると、もっと安くなる・・・
     こうなったら、しわ寄せは生産現場に来る。

  田坂 「思わず財布のひもがゆるんじゃった」
     と言うような世界をつくれるかどうかが、
     ビジネスの進むべき方向だと思います。


マーケティングばやりの世の中、大事なものを忘れている。
商品が売れなければ、会社は立ち行かなくなる。
しかし、ただ目先の売上げだけに血眼になっていると
精神をすり減らしてしまう。

何かひとつでも、ビジネスの中にクリエイティブなことが必要。


リクルートで雑誌を創刊した、くらたまなぶ氏と藤井大輔氏は
雑誌創刊するにあたってマーケティングからスタートしている。
でもそれは市場調査で出た数字をそのまま
購読者のニーズと受け止めて、雑誌を作成したのではない。

市場調査では汲み取れていない購読者の心理を洞察し、
いろいろ実験をしながら雑誌を育てている。

彼らにとって市場調査は、雑誌を売り込むターゲットではなく、
一緒に雑誌を作っていく共同作業者なのだ。

この二人にとっては、
市場調査の数字に潜んでいる購読者心理を洞察し、
それを雑誌の記事構成などに反映させることが
クリエイティブな活動なのだろう。