リストラされたエンジニアの転職

昨日、NHKのドキュメンタリー番組『追跡! AtoZ (日本の”頭脳”はどこへ行く)』を見た。


日本の大手電機メーカーをリストラされた人たちが、中国電機メーカー(ハイアール)に転職している現状のレポートだった。

何を問題としているのか良くわからない番組構成だった。
番組の最初は、「日本の頭脳が中国に流出していることに対する懸念」を中心に進めている感じだったが、番組後半は、中途半端なスキルの転職希望者は、もはや中国メーカーにでも受け入れてもらえないと、リストラされた中年の方々の行く末を心配しているような内容。


リストラされた中年を心配することが番組の目的なら、それは時代の変化をもっと大きな視点で見直すべきだ。昨日の番組は、目の前で起きた個々の事件を追っかけて、「大変です。大変です。」と、わめいているだけのように映った。


番組の中で、日本人エンジニアを中国メーカーに紹介している人材派遣業者が言っていた。
「電機メーカーでエンジニア経験が10年あるといっても、一つの専門分野に特化して10年続けてきた人は中国で引き合いがあるが、いろんな分野を3年ごとに渡り歩いてきたエンジニアを欲しいというメーカーはない。また、古い知識に対しても、中国メーカーは価値を認めない。日本人は中国人の5倍くらいの給与を要するから、今中国にないものでないと、中国メーカーは対価を支払う気はない。」


これは、今に始まったことではない。日本ですでに行き先を失っているエンジニアの市場価値が、遅れて中国でも下降しているということだ。

結局、中途半端なスキルの持ち主は、田坂広志氏が言うところの”知識の中間業者”でしかない。専門知識をもったエンジニアだって、今は需要があるが、中国人がその知識を吸収した後は捨てられる可能性大だ。

就職した会社のどの部署に配属されるのかは、会社の都合によるところが大きい。だから、個人個人が常に自分自身を磨かなければならない。
それは単純に、資格の勉強をするとか、起業を考えるとかではない。自分自身の生き延びる術ばかりに躍起になっても、それは世の流行を追っかけているだけだ。自分がその流行りモノが好きで夢中になっているのならともかく、他の大勢の動向を見て真似しても、世の情勢に左右されるだけ。


どうせ世の中は思った通りにならない。世の中の流れを見据え、社会全体を俯瞰する視点で、自分の立ち位置を見つめないと足元をすくわれてしまう。いつになっても、追い立てられる立場のままだ。