コンテンツからコンテクストへ

佐藤可士和のクリエイティブシンキング』の中で、コンテンツについて佐藤が触れている。
「最近特に実感しているのが、”コンテンツからコンテクストを作る”ことの重要性です。コンテンツは個々の内容、コンテクストはそれらがつながった文脈と言うことになります。・・・・
日本では企業が良い製品を作ったとしても、”単発的”になってしまうことが多く見受けられます。それに対し欧米では、ブランドストーリーやコンテクストという概念がとても大事にされています。欧米ブランドのほうが、そのブランドに対して、消費者にハッキリとしたイメージを持たれていることが多いのは、この違いによるところも大きいのではないでしょうか。」

最近、コンテンツマーケティング関連の本を読んで、「これからのビジネスはコンテンツが大事だ」と考えていたので、この文を読んだときコンテンツとコンテクストを混ぜこぜで考えていたことを知らされた。

世の中全体もきっとコンテンツとコンテクストを分けて考えてはいないと思う。商品や作品など売り物に何かしらのテーマや一貫性があれば、すべて”コンテンツ”ということばで捉えてきた感がある。

佐藤が言うところ、コンテクストとは個々に存在するコンテンツをつなげる物語ということだ。

個人的な見解としては、逆ではないかと思う。日本ではコンテクストを先に作成して、それに合わせたコンテンツをひねり出しているのではないかと思う。

ただ日本の場合、市場調査の結果や、業界の売れ筋に合わせたようなコンテクスト(物語)を作成する傾向が強い。だから、薄っぺらなことばの羅列、似通った猿真似デザインになってしまう。心に響くものがない。


佐藤の方針として、まず最初にクライアントとの打ち合わせを繰り返している。そこでクライアントの思想や理念、夢など、哲学的なことを聞き出す。これが、佐藤の言う”コンテンツ”なのだろう。
その後に佐藤は聞きだした個々の理念や思想、夢を結びつける物語を編み出す。これが「コンテクスト」だ。このコンテクストを編み出すときも、佐藤はクライアントとのコミュニケーションを綿密に行なっている。
「コンテクスト」をクライアントと共有できてから、その「コンテクスト」を具現化する作業にかかる。ようやく、ロゴや商品デザイン、店舗レイアウトなどが生まれる。


佐藤の仕事は、単なる”ヒラメキ”などの天才肌の為した技ではない。


建物を建てるときに、設計図にしたがってくい打ちから土台作りをしていくように、順序にしたがってデザイン設計をしている。
その出発点は、クライアントの内部ある。クライアント自身も気づいていない、彼らの哲学を拾い出すことから始まる。

一見、遠回りだ。
でも、佐藤のやり方はクライアントとの意識の共有をベースに組み立てているから、結果的にやり直しが少ない。また、共有意識が、クライアントとの共同作業になっている。だから、クライアントの会社の個々の構成員が、できあがった作品に対して納得している。

短絡的な思考だと、クライアントから依頼を受けてすぐにラフ図やデモ版をプレゼンしなければいけない、と考えてしまう。特に、今はスピードの時代。素早い対応が求められる。


佐藤の作品作成の方法は、参考になる。